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今どきのABC分析

ABC分析の基本

ABC分析は顧客や商品の売上分析に古くから利用されている分析手法で、「顧客や商品の『重点化』を図り、そこに営業リソースを集中することによって、『業績の安定化』を目指そうとする」手法で「重点分析」ともいわれます。

顧客の例でいうならば、次のようになります。
顧客別売上実績を大きい順に並べて、その実績合計が全顧客の80%を占める顧客群をAランクの顧客と位置付けます。
そして次の10%の実績を占める顧客をBランク、残り10%をCランクとします。
これを図で示すと次のようになります。

顧客別実績を上位から並べた棒グラフと、顧客ごとの累計実績を折れ線グラフにしたもので、「パレート図」とも呼ばれます。
ABCチャート

この例は、顧客別実績を上位から並べた棒グラフと、顧客ごとの累計実績を折れ線グラフにしたもので、「パレート図」とも呼ばれます。図からは19社の顧客で合計実績の80%を構成していることがわかりますが、この19社を「Aランクの顧客」と位置づけます。以下、同様にB、Cランクの顧客を切り分けます。

ABC分析では、このようにしてランク分けを行った上で、各ランクに合わせた対応を考えるもので、通常は次のような対応になります。
① Aランクの顧客を重点顧客と位置づけ、維持・発展のために注力する
  ・Aランクの顧客が多すぎる場合は、営業のエネルギーが分散するので、重点顧客を絞り込む
  ・逆に少なすぎる場合は、Bランク顧客の中から重点顧客に育てるものを選定する
  ・このようにして、チームの力に見合う重点顧客を維持して、安定した売上確保を目指す
② Bランクの顧客については、基本的には現状維持の対応とする
  ・有望顧客発掘のために状況を注視することは継続していく
③ Cランク顧客については「成り行き任せ」にすることが多い
  ・新規顧客を中心に、将来の拡大の可能性をリサーチして、「機会発見」の手段とする

ABC分析が生まれた背景

ABC分析は、「パレートの法則」を売上分析に応用したのが始まりです。
「パレート」はイタリアの経済学者の名前で、彼が1986年発表の論文の中に、「統計的にみると、国家の所得は、20%の富裕層で全所得の80%を占めている」としたのがパレートの法則。
これは「二八(にはち)の法則」とも言われ、経済活動における様々な現象を論じるときに利用されてきました。例えば「上位20%の顧客で売上の80%を占める」という具合です。
なお、20%、80%という数字は統計的な数値であり、厳密なものではなく、「一握りの顧客で売上の大部分を占める」くらいに考えてもよいでしょう。(企業によっては「上位70%をAランクとする」というところもあります)
そして、先に示したABCチャートを「パレート図」とも呼ぶのは、ここからきているのです。

ABC分析の特徴

このようにして生まれたABC分析ですから、その考え方は「上位80%」に注目する「重点分析」が中心になります。そしてパレート図は、その構造を一目でわからせてくれるため、営業会議などの資料としても重用されているのです。
例えば顧客別売上実績について報告する場合でも、数値の一覧表よりパレート図の方が、受け手に対してはるかに多くのことを伝えてくれるということは論を待たないでしょう。

なお、ABC分析の性格として次の点を確認しておく必要があります。即ち、
・分析対象となる値は1つだけ(例えば「売上」だけ、「利益」だけ)
・「推移」という要素は入らない
ということです。
そのためABC分析は、「概要の把握と重点化検討の手段」として多く利用されてきました。そしてこれと並行して、売上・利益など複数項目の推移や変化の比較といった、より詳しい分析のための手法が次々と生まれてきたのです。

ABC分析利用上の注意点

取引の全体像を一目でわからせてくれるABCチャート。この「一目」の時に、受け手に間違いを起こさせないために、次の3つの点に注意しなくてはなりません。
・数値を表す棒グラフには「年間合計」を表示する
・横軸の項目に「その他」を使用するときには、「その他」を最後に表示する
・商品別分析を行う場合は、横軸に「後継品など互いに関連する商品」を合算して表示する

販売実績には、一般に「季節変動」があることはご存じでしょう。
したがって、例えば顧客別のABC分析を「4月」だけの実績で行うと、顧客の実績順位が季節変動の影響を受けて、「顧客の実力」通りの順位にならない可能性があります。
それに対して、棒グラフの実績に過去1年間の「年間合計」を使えば、1本の棒の値にはすべての月が含まれているので、季節変動の影響を受けにくくなり、顧客の実力に近い順位が得られます。

次の「その他」についてですが、「その他」には実績の少ない顧客、それこそ「その他大勢」の顧客の実績が合計されているはずです。ところがこの値は合計値であるが故に、時には上位ランクの中で大きな顔をしていることがあります。時には最上位に位置することも・・・
一般に「その他」に分類されるのは、スポット取引など、取引額が小さい顧客、本来ならCランクに位置付けられる顧客でしょう。したがって「その他」は、横軸の最後に表示するべきです。

最後の商品別分析では、より注意が必要です。
個別商品を単純に実績順に並べただけでは、判断を誤る恐れがあります。例えば、現行商品の後継品、改良品が売り出された場合は、それぞれの商品を単純に実績順に並べると実績が分散して表示されるため、その商品群の正しい実力がわからないからです。
従ってこのような時は、新・旧商品の合計実績で見ないといけません。

ABC分析を上手に使おう

ここでは、ABC分析を利用するときのコツを紹介します。
・営業チーム全体に、重点化の習慣が浸透するようにしましょう
・ABCチャートに棒グラフの「密度の効果」を加えましょう

ABC分析の目的である「重点化」志向の習慣がチームに根付くしくみを作ります。
グループミーティングや営業会議では、顧客や商品別実績をできるだけABCチャートで準備します。それによって「何が重要なのか」ということが自然に部員に伝わり、彼らが報告や討論で優先すべきことを示唆してくれるでしょう。

もう一つはチャートの工夫です。
棒グラフは、棒の「長さ」だけではなく、「面積」でも情報を伝えてくれます。例えばチーム全顧客のABCチャートの棒グラフを、営業担当者ごとに色分けすれば、色の分布と密度が担当者別動向の特徴を伝えてくれるでしょう。
また、商品分析の場合も、同じグループに属する商品を色分けしておけば同様の効果はありますが、グループごとに商品をまとめる作業が煩雑になるので、この場合は「売上マップ」「推移グラフ」の利用を勧めます。

ティータイム

お疲れさま。 一服しましょう。

パレートの法則は、世の中のいろいろなことに当てはまるようで、「アリ(蟻)」の世界で試した人のお話。
「アリはみんな働き者」という話は昔キリギリスから聞いたように思いますが、実はそうではないらしい。
何と、働き者は2割しかいなくて、働かないアリが2割、その中間が6割いるとのこと。まるでABC分析ではありませんか。
さらにその人は考えた。「働き者のアリだけを集めて飼えば、素晴らしい社会ができるはずだ」
しかし結果は、「せっせと働いたのは、やっぱり2割のアリだった」ということでした。

この話を聞いて、あるコンサルタントははたと手を打った。
実は彼、クライアントから1つの相談を受けていたのです。「無理して優秀な社員を何人も採用したつもりなのに、ちっとも業績が伸びない」
彼は言いました。「社長! 優秀でない社員も入れなさい!」
それで組織はうまく回るようになり、業績も伸びたとか・・・ ?!!

今どきのABC分析

一服したところで、まとめです。
昔から盛んに利用されてきたABC分析の考え方も、現代では少し考え方を修正していく必要があります。その大きな理由は、ITと物流の進歩です。

昔の小売店の例で考えてみましょう。
商品は店頭に並べられるだけの商品しか仕入れなかったでしょうし、お客も「近くから買いに来てくれるお客さん」が中心だったでしょう。したがって顧客や商品の数もそんなに多くはなく、ABC分析もわかりやすいものでした。

今はどうでしょう。
ITは、多くの顧客や商品への対応、販売管理を可能にしてくれました。また多くの顧客への情報提供も楽になりました。
さらに物流の進歩は、「1個でも仕入れられる」、「1個でもお届けします」というビジネスを可能にし、「多品種少量販売」の波が押し寄せてきました。

この環境下でのABC分析は、横軸に多くの顧客または商品が並び、したがってAランクを構成する顧客や商品の数、すなわち「重点化策の対象」の数も大きくなるのが普通です。

重点化ということは、その顧客なり商品の実績を維持・拡大するための活動を強化することが前提ですから、営業担当者がカバーできる範囲でなければなりません。特にB2Bビジネスではこの点が重要です。

そこで、Aランクの顧客や商品が多い場合は、それらの中から「本当に注力する対象」を絞り込んで重点化を進めていきます。
もし、チームの営業形態が「待ちの営業」の傾向が強い場合は、データは「成り行きの姿」を表しています。この場合は「強い顧客(または商品)を育てる」つもりで対象を選定し、重点化を進めていくことが望まれます。
これによってチームの売上構造は、「より安定した構造」へと進化するでしょう。

さて今度は、B、Cランクの話です。
パレート図で、横軸の項目数が多くなってなると、当然B、Cランクの幅も長くなります。この部分を「ロングテール(恐竜の長ーい尻尾)」と呼ぶことがあります。
通常、このロングテールに属する顧客や商品は、「金額の割に手間がかかる」ため敬遠されがちですが、逆にここに注目する考え方があるので、3つの例を紹介しておきます。

① ITによる管理方法と物流システムを最大限活用して、ロングテールの顧客や商品にも注力する
  顧客へのきめ細かいサポートと品ぞろえの充実によって「塵も積もれば山となる」を追求
② ロングテールにある商品だが、上位顧客のつなぎ止めに必要な商品として常時在庫する
  小売店で、「優良顧客御用達」として品切れを起こさないようにしている商品
③ ロングテールの中の顧客や商品の動向を精査して、「機会」を発見する
  ロングテールの中に埋もれている「宝」を探す

上記②と③については、実態を詳しく知るために、顧客と商品を結び付けた分析が必要になるので、実際の分析には別の手法を利用します → 「RFM分析とその応用」

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