
大きな居酒屋チェーンを展開している企業の本社
各店の業績管理を担当する部署のマネージャが、首をひねっているところに行き当たりました。
聞けば「データを集計してみて、それまで売上トップのちゃんこ鍋が全く出なくなったのが分かった。何かトラブルでもあったのか」と思案しているとのこと。
「そんなのは、お店に聞いてみたら?」 そこでお店に電話してみると、
「だって、鍋って3月まででしょ?」 これには彼も口をあんぐり。
「いくらルールがそうだからって、直前まであんなに売れてたんだから、気を利かせて何か言ってきてもよさそうなもんだ!」 私を見た彼の眼は、そう言っていました。
もう一つ、今度はビールの話です
ある酒販会社(酒類卸売業)の社長室。社長は各営業部署の販売状況を示したグラフを見ています。
しばらくすると、彼は部署ごとの商品別売上グラフをあちこち切り替えながら何かに気づいた様子。そして言いました。
「なぜビールは冬の方が安いのだ?」 彼の考えはこうでした。
「夏場はビールの需要期だから、競争で利益率が下がるのは分かる。でもその分利益額は上がっている。冬はそんなに売れている訳ではないのに、なぜ利益率は夏より悪いのだ?」
同席していた営業課長が言うには、「冬のビールの売上ノルマがきついので、全社的に安売り傾向」とのこと(どうも社長以外はみな知っていたらしい)。
企業の販売データは、その会社の強みも弱みも正確に反映して、我々に様々なヒントを与えてくれる「宝物」です。でもそれに気づいてこその宝物。声なき声に耳を傾けてみてはどうでしょう。
―― その後酒販会社では、現在のノルマが合理的なものか議論されたようですが、社長に結果を聞きに行ったら、「おまえには教えない」と言われてしまった ――